近年、マットレス市場ではファイバー素材が注目を集めています。プロアスリートも使っていると聞くと、興味を持たないほうが珍しいでしょう。また、ファイバーマットレスだけでなくウレタンマットレスでも高反発がトレンドですから、これまで高反発ウレタンのマットレスを使っていた人も注目していると思います。
とは言え、「ああ、大谷選手が使っているやつね」という認識の方が多いのが実情かもしれません(ドジャースの大谷翔平選手が使っているのはウレタンマットレスの西川「Air」)。そこで今回は、ファイバー素材とは何なのか、どんなメーカーやブランドのマットレスがあるのかということについてまとめてみたいと思います。
※この記事は2025年4月19日時点の情報に基づいています
ファイバーマットレスとは?

ファイバーマットレスとは、上写真のように繊維状にしたポリエチレンやポリエステルなどの樹脂が立体的に絡み合ったものものを詰め物として使ったマットレスです。2007年にエアウィーブの販売が始まるまではノンコイルマットレスと言えばウレタンが主流でしたが、現在は新しい選択肢として認知が進んでいます。
以下、ファイバーマットレスのメリットとデメリットについて見ていきたいと思います。
メリット
- 通気性に優れている
- 水洗い可能で衛生的
- 硬さの変化が少ない
- 体圧分散性が高い
- 寝返りを打ちやすい
通気性に優れている
ファイバー素材は硬い繊維状のものが絡み合った構造のため、空洞が多くて空気が循環しやすく、湿気がこもりにくくなっています。そのため、夏の蒸し暑い時期でも蒸れにくく、快適に眠ることができます。
水洗い可能で衛生的
サビる可能性のあるコイルスプリングや保水力の高いウレタンと異なり、ファイバーは水洗いが可能です。汗や汚れ、ホコリ、ダニなどをシャワーで洗い流すことで、衛生状態を保つことができます。もちろん、カバーも洗うことができます。
硬さの変化が少ない
ウレタンマットレスは一般的に使い続けると反発力を失っていきます。一方で、ファイバーマットレスはそのようなことは少なく、使い続けても購入時の硬さを維持しやすいと言えます。
体圧分散性が高い
ファイバーマットレスは樹脂でできた繊維が複雑に絡み合っているので、腰や肩など特定の部位を圧迫することなく、体圧を周囲に分散させることができます。これにより、腰痛や肩こり、血行不良、不快感を解消するための寝返りを減らすことができます。
ただし、ファイバーマットレスは基本的に硬めなので、体圧分散性を実感できず、逆に腰や肩などが圧迫されると感じる方もいます。
寝返りを打ちやすい
ファイバー素材は一般的に硬めです。また、繊維が立体的に絡まっているので、多方向からの圧力に対応できる適度な反発力を備えています。そのため、睡眠中に自然に体を動かしやすく、寝返りを打ちやすいと言えます。
デメリット
- 価格が高く感じられる
- 耐久性は高いとは言えない
- ソフトな寝心地は選べない
- 音や感触が気になることも
- 冬場に寒く感じることも
価格が高く感じられる
ファイバーマットレス市場はエアウィーヴが市場を牽引しているということもあり、ほかの種類のマットレスに比べると総じて価格が高く感じられると思います。
耐久性は高いとは言えない
価格が高くても長く使うことができれば決してコスパは悪くないのですが、ファイバー素材は使い続けるうちに脆くなっていきます。そのため、耐久性は高いとは言えません。
ソフトな寝心地は選べない
ファイバーマットレスの持つ様々なメリットは魅力的ですが、基本的に硬めで、ほかのマットレスのようにソフトな感触のものを選ぶことができません。ただし、ウレタンなどを組み合わせたハイブリッドタイプもあります。
音や感触が気になることも
ファイバーマットレスは枯草の上に寝ているような感触だったり、パキパキとファイバーが擦れるような音が気になることがあります。もっとも、コイルスプリングもミシミシと鳴ったり、弾むような感覚が気になる方もいると思うので、好みの問題ではあります。
冬場に寒く感じることも
ファイバーマットレスは通気性が良いので、そのままでは冬場に寒く感じられることがあります。ただし、ニット生地など気密性の高いカバーに変えることで(夏冬リバーシブルのカバーもあり)、断熱効果や蓄熱効果を得ることが可能です。もちろん、その際は通気性が妨げられます。
選ぶ際のチェックポイント
- 材質
- 構造
- 耐久性
- 厚み
材質
材質 | ファイバー | 主なブランド | 特徴 |
---|---|---|---|
ポリエチレン | エアファイバー | エアウィーヴ | 透明色 熱に弱い きしみ音が小さい 重い(非チューブ構造) 耐久性が高い 乾くのが早い |
エアループ | エアループ | ||
ライトウェーブ | リテリー | ||
アクアゴールドファイバー※1 | エアロクレイドル | ||
3次元構造高反発ファイバー | スリープオアシス | ||
グリーンファイバー | ブレインスリープ | ||
C-CORE | Nスリープ+エア | ||
ポリエステル | ブレスエアー※2 | B-AIR | 乳白色 熱に強い きしみ音が生じる 軽量(チューブ構造) 耐久性が低い 乾くのが遅い |
エアロキューブ | エアリー | ||
三次元網状繊維構造体※3 | Nブレス+エア |
※1…エアロクレイドルのアクアゴールドファイバーはライトウェーブにファイテン社の独自技術アクアゴールドシリカを配合した素材です。 ※2…ブレスエアーを使ったマットレスは他にももっとたくさんありますがここでは割愛します。 ※3…ニトリのNブレス+エアの三次元網状繊維構造体は東洋紡エムシーが製造していますがブレスエアーとの関連性については不明です。
マットレスに使われるファイバー素材にはポリエチレン系とポリエステル系の2つがあります。それぞれイメージしやすいように代表的なブランドを併記していますが、各社各商品によって原料の配合や太さおよび密度などを変えており、また基準も異なるので、それぞれの特徴については若干齟齬が生じることをご了承ください。
メリットを軸に説明すると、ポリエチレン系はきしみ音が小さく、耐久性が高いと言えます。ポリエチレン自体が物理的に強度が高いことに加え、ファイバー繊維がチューブのような構造になっていないためです。洗ったあとに中に水が溜まらないので乾きやすいというメリットもあります。
一方、ポリエステル系は軽量で熱に強いのがメリットです。電気毛布を使ったり、お湯で洗う際にも安心と言えます。
構造
1枚もの
ファイバーマットレスは様々な構造のものがあります。一枚ものはもっともシンプルな構造です。密度の異なるファイバーコアを複層にしたものや、カバーのほうにポリエステル綿やウレタンを入れることでソフトな寝心地に仕上げているものもあります。
また、リブ加工を施すなどして敷布団のように畳むことができるものもあります。ただし、ファイバー素材は端のほうから崩れやすい性質があるため、頻繁に折り畳まないほうが良いと個人的には思います。
ゾーニング設計仕様
1枚ものでも全体が均等の硬さではなく、肩回りだけを柔らかめ、もしくは腰回りだけ硬めにしているものもあります。前者は横向きで寝ることが多い方、後者は腰痛が気になる方に適した仕様と言えるでしょう。
分割
通常3枚以上に分割されたファイバーコアを使用したものは複数のメリットがあります。上写真のように立て掛けて干すことができる。ヘタり具合に応じて各パーツをローテーションできる。厚手のマットレスでもコンパクトにして配送できる。コンパクトに収納できる。洗う際に取り回しがしやすいなどです。
一方で、デメリットもあります。継ぎ目が生じることによって寝心地が悪くなる可能性がある。継ぎ目部分から傷みやすいなどです。
分割×リバーシブル等
同じ性質のファイバーコアを分割したものだけでなく、表裏で硬さを変えたものや、硬さの異なるコアを2枚重ねにすることで、好みに応じて寝心地を変えられるものもあります。ブレインスリープのように足元だけ厚みを変えているものもあります。
ハイブリッド
ファイバーコアだけではどうしても硬めの寝心地になってしまうので、表面にウレタンなどを入れているものもあります。同様に、ファイバーマットレスの上に敷いて使う専用のベッドパッドを用意している商品もあります。
耐久性
ファイバー素材は端のほうが脆くなってしまう性質があります。その点、エアロクレイドル(上写真)やブレインスリープ、エアループは、端を切りっぱなしではなく、固めてちぎれにくいように加工されています。特にエアループは4辺とも密度を上げて硬くしています。耐久性が心配な方はそういった加工が施されているものを選ぶと良いでしょう。
厚み
ファイバーマットレスの厚みは3cm程度から20cm程度まで様々です。基本的に3~5cm程度のものは一般的なマットレスの上に敷いて使うトッパーです。単体で使うと底つき感が生じると思います。
ファイバーマットレス単体で使うなら最低でも6cm以上のものを使いましょう。厚みが10cmを超えると、より高い体圧分散性が期待できます。ファイバーコアが2枚重ねになっていたり、ウレタンとのハイブリッドになっているものもあり、より寝心地にこだわることができます。
代表的なブランド
ポリエチレン系
エアウィーヴ
販売元 | エアウィーヴ |
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販売開始 | 2007年 |
材質 | ポリエチレン |
製造国 | 日本(カバ―除く) |
税込価格 | マットレス:115,500円~ トッパー:38,500円~ |
「airweave(エアウィーヴ)」はファイバーマットレスの火付け役であり、発売から17年が経つ現在もリーディングカンパニーです。フィギュアスケートの浅田真央選手がブランドアンバサダーを務めているということもあって非常に高い人気を誇ります。
エアウィーヴはポリエチレン系の「エアファイバー」という独自のファイバー素材を使っています。高価ですが、30日間お試し可能なので安心して試すことができます。
エアループ
販売元 | ウィドゥ・スタイル |
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販売開始 | 2000年代 |
材質 | ポリエチレン |
製造国 | 日本・中国 |
税込価格 | マットレス:89,800円~ |
「Air Loop(エアループ)」はウィドゥ・スタイル(旧・大塚家具製造販売)のポリエチレン系ファイバーおよび商品名です。もともと大塚化学グループで人工芝生の製造もしていたことから、こういった素材を開発できる素地があったのでしょう。
エアループは上中下の3ゾーン設計で腰部をサポート。また、エアループコアはソフトとハードの2種類から選ぶことができるとともに、表面にウレタンなどを使うなどしてソフトな寝心地を実現しています。
リテリー
販売元 | モーブル |
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販売開始 | 2015年 |
材質 | ポリエチレン |
製造国 | 日本 |
税込価格 | マットレス:39,800円~ |
「Literie (リテリー)」はもともとリビングボードなどを製造していたモーブルの寝具ブランドです。独自に開発したポリエチレン系の「ライトウェーブ」を使用しています。
リテリーのマットレスは敷布団タイプと厚み18cmのマットレスのほか、電動ベッド用もあります。また、マットレスには抗菌仕様のブラックもあります。
エアロクレイドル
販売元 | ファイテン |
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販売開始 | 2017年 |
材質 | ポリエチレン |
製造国 | 日本 |
税込価格 | トッパー:57,200円~ |
ファイテンの「AERO CRADLE(エアロクレイドル)」で使われているファイバーコアはモーブルのライトウェーブがベースです。ライトウェーブにファイテンの独自技術アクアゴールドシリカを配合した素材「アクアゴールドファイバー」を中芯に使い、専用カバーにファイテンの「メタックス」を使用しています。
エアロクレイドルには単体で使えるマットレスがなく、マットレスパッド(トッパー)のみです。
スリープオアシス
販売元 | ライズ東京 |
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販売開始 | 2016年 |
材質 | ポリエチレン |
製造国 | 中国 |
税込価格 | マットレス:36,300円~ トッパー:13,860円~ |
ライズ東京(RISE)の「スリープオアシス」はポリエチレン系の「3次元構造 高反発ファイバー」を使っています。
ライズ東京ではウレタンマットレス(スリープマジック)も扱っており、ウレタン、ファイバー、ハイブリッドの3つから選べるようになっています。プロおよびアマチュアのアスリートの愛用者も多く、スポーツマンには選びやすいのではないでしょうか。
ブレインスリープ
販売元 | ブレインスリープ |
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販売開始 | 2021年 |
材質 | ポリエチレン |
製造国 | 日本 |
税込価格 | マットレス:66,000円~ トッパー:44,000円~ |
「BRAIN SLEEP(ブレインスリープ)」は脳と睡眠を科学するソリューションカンパニー。クラウドファンディングのMakuakeにて2020年に枕、2021年にマットレスの販売を開始しています。
ブレインスリープは「グリーンファイバー」という独自のポリエチレン系ファイバー素材を使用。肩回りは5つのグラデーション、足元は3つのレイヤー構造を採用し、宇宙空間のように体にもっとも負担の少ない姿勢で眠ることができます。
Nスリープ プラスエア
販売元 | ニトリ |
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販売開始 | 2024年 |
材質 | ポリエチレン |
製造国 | ベトナム |
税込価格 | マットレス:59,990円~ トッパー:29,990円~ |
ニトリの「Nスリープ プラスエア」はシーエンジ販売が開発したポリエチレン系の「C-CORE(シーコア)」を採用しています。シーコアは日本国内で製造されているので、カバーの縫製を含めた最終工程をベトナムでおこなっているものと思われます。
ラインナップは4つで、NF001はトッパー、NF002はコア2枚重ね、NF003は2枚重ねで3ゾーン設計、NF004は3ブロック×2層=計6ブロックで硬さをアレンジできる仕様となっています。
ポリエステル系
エアリー
販売元 | アイリスオーヤマ |
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販売開始 | 2012年 |
材質 | ポリエステル |
製造国 | 日本 |
税込価格 | マットレス:17,800円~ トッパー:12,360円~ |
アイリスオーヤマの「Airy(エアリー)」は、それまで主に鉄道車両のシートなどに使われていた東洋紡エムシーのブレスエアーを寝具用に改良した「エアロキューブ」を使用しています。
アイリスオーヤマは主な販路がホームセンターということもあって、他社競合商品と比べると価格は手頃です。多様なニーズに応えるためラインナップも豊富に揃っています。
B-AIR
販売元 | 浅尾繊維工業 |
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販売開始 | 2012年 |
材質 | ポリエステル |
製造国 | 日本 |
税込価格 | マットレス:40,700円~ トッパー:33,000円~ |
浅尾繊維工業は羽毛布団やムートンパッドなど寝具全般を扱うメーカー。「B-AIR」は東洋紡エムシーのブレスエアーを使用したファイバーマットレスです。
上位モデルのPROシリーズには高密度オリジナル仕様のブレスエアーが使われています。PROシリーズはいずれも3つ折りマットレスで、ウレタン(ユーロフォーム)とのハイブリッドタイプもあります。
Nブレス プラスエア
販売元 | ニトリ |
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販売開始 | 2024年 |
材質 | ポリエステル |
製造国 | 中国 |
税込価格 | マットレス:19,990円~ |
ニトリにはもうひとつファイバーマットレスがあります。「Nブレス プラスエア」は東洋紡エムシーが製造しているポリエステル系の三次元構造体を使っています。同じ東洋紡エムシーが扱っているブレスエアーとの関係性は不明です。
内部は3ブロックに分かれており、中央は硬めで腰部をサポートします。片面はメッシュ、片面はニット生地のリバーシブルです。
オーシンが製造しているポリエステル系ファイバー「エアーラッセル」を使った「ファインエアー」というマットレスがあります。こちらも広義ではファイバーマットレスですが、ブレスエアーなどがファイバーを絡めて作った不織布状のものであるのに対し、エアーラッセルは繊維を高さ方向に編んだものです。構造的に異なるものなので、今回の一覧には含んでおりません。
基本的にファイバーマットレスは硬めの寝心地を好む方に向いています。また、通気性や衛生面を重視する場合に高反発ウレタンよりも魅力的な選択肢と言えるでしょう。特に、夏に寝苦しく感じることが多い方、ダニやハウスダストが気になる方にはメリットが大きいと思います。
一方で、ファイバーマットレスは万人向けとは言えません。ソフトな寝心地を好む方はもちろん、硬めが好きでも高反発ウレタンマットレスやコイルマットレスのほうが合う方もいらっしゃるはずです。ファイバーマットレスは他のマットレスに比べて価格が高いことが多いということもあるので、様々な選択肢からご検討いただければと思います。
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